ここ数シーズン、キングことロレンツォ・M・サルヴァトーレの独壇場を、唯一脅かす存在が現れ、多くのファンが新たなチャンピオンの誕生を望んでいる。
その期待を背負っているのが、キングに対抗すべく「クイーン」と称された、アリス・サマーウッドだ。
両者ともに、ドライビングテクニックが極めて高いことは当然だが、二人のマシンにどのような違いがあるのかにも、今回は注目してみよう。
マシン正面
正面が違えば、マシン全体のコンセプトも変わって来る。
コックピットから先端に伸びるノーズ部分の、路面との距離が高い、大胆なハイノーズ機構を採用しているのが、キングのマシンだ。
これにより、空気を車体の下に取り込み、強力なグランドエフェクトを発生させる。
グランドエフェクトに依存したダウンフォースは、不安定な路面では一気にダウンフォースが抜けるデメリットもあるが、路面整備が入念に行われている現代のサーキットにおいて、NEXレースでは比較的トレンドになっているかもしれない。
そして、キングのマシンに特筆されるのは、パーツ面積の狭さだろう。
徹底的なパーツの軽量化を行うことで、加速や旋回性能にメリットを及ぼす反面、空力パーツからダウンフォース(マシンを地面に押さえつける力)を生み出すことが困難にも見える。
リアウイングの異常な細さは、リアのグリップ不足に直結するだろう。しかし、そのデメリットをフォローしているのが、特異的なサイドポッドの湾曲した窪みと考えられる。
専門家の見解によると、こちらはリアウイングでマシン後方のダウンフォースを得ない代わりに、サイドポッドの湾曲部分で十分なダウンフォースを確保するためのソリューション。そして、なぜリアウイングでわざわざダウンフォースを減らすのかは、後続車へ与える”ある影響”を狙っているのだろう。
先行で逃げ切れる技術があるからこそ、後続車のスリップストリームの効果を抑制することが出来るからだ。この独特の機構により、一度キングに抜かれた者がオーバーテイク出来ないという理由も理解できる。
対してクイーンのマシンは、マシン上部でダウンフォースを受けているように見てとれる。
大型のフロントウイングの上にも、更にエアロパーツが羽根を広げており、フロントのグリップは絶大であろう。
タイヤは完全に覆いかぶさるようにカバーリングされているため、タイヤ熱の維持は容易だろうが、ブレーキの熱交換効率には課題が残っていそうだ。
マシンに凹凸は少なく、フロント全体で受けた空気を、綺麗にリアウイングまで流し込むため、キングのマシンに比べて、前後のダウンフォースレベルは均等と言える。
次に、側面から見た印象について述べよう。
マシン側面
側面からマシンを見て、一番最初に見る重要なポイントは、フロントタイヤからリアタイヤまでの間隔、つまりホイールベースだ。
しかし、こちらは両者共にロングホイールベースを採用している。
ロングホイールベースは、小回りが利きにくい代わりに、コーナリング時の遠心力に耐えやすくなるため、高速コーナーでスピードを維持しやすい。
キング、クイーン共に、低速コーナーよりも高速コーナーを重視していることは共通と言える。
コックピットの配置は、前後の差こそないが、キングの方が低い位置にあるため重心が低くなる。
低重心の方が安定性が増す反面、周りが見えにくくなるため、操縦性の難易度は高そうだ。
リアタイヤ前で気流を整えるバージボードは、クイーンの方が長くサイズも大きいため、乱気流を取り除きやすくリアは安定するだろう。しかし、こちらもタイヤ全体を覆いかぶせるようなパーツが大きく、ブレーキ熱交換の問題もあり、減速までの制動距離は長くなる。
テクニカルコースになればなるほど、クイーンのマシンは真価を発揮しにくく、中速・高速サーキットを得意とする印象だ。
マシン背面
マシン下部のディフューザー出口は、キングのマシンは大きめだ。
先に述べたように、マシン上部で得るダウンフォースは、明らかにクイーンのマシンに軍配が上がるが、キングのマシンは大規模なハイノーズ型に加え、大きなディフューザーから見てとれるように、グランドエフェクトによるダウンフォースに重視を置いている。
また、タイヤがハの字になる、ネガティブキャンバーを採用している。
これにより、コーナーでの安定性を補填しているため、キングのマシンの方向性に辻褄が合ってきた。
逆にクイーンのマシンは、キャンバー角がついていないように見える。
キャンバー角が付いていないならいないで、トラクションが掛かりやすいため、加速時のタイヤの空転が少ないメリットもある。これらのソリューションから、おそらくクイーンのマシンは運転しやすいバランス型に仕上げられているのだろう。
NEXレースのキングとクイーン マシン比較まとめ
まとめると、つまり以下の特徴となる。
【アドリアーノ・フォーミュラ キングのマシン】
パーツ点数が少なくても、グランドエフェクトとネガティブキャンバーで、高速コーナーでグリップを得られるような構造。低速コーナーへのアプローチは、ダウンフォースではなく軽量化にすることで対策を打っている。
【アリアンロッド・レーシング クイーンのマシン】
マシン上部から得るダウンフォースが多く、グランドエフェクト型のような一気にダウンフォースが抜ける現象も起きにくいため、中速から高速コーナーでの安定感は高い。パーツの多さによる重さは、タイヤのキャンバー角をつけないことで、立ち上がり加速の良さを引き出している。
NEXレースは、マシンレギュレーションが少ないため、各チームが特徴的なデザインをしているから面白い。今後、他のマシンデザインにも注目して、NEXレースを楽しんでいこう。
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