初勝利の武戦レーシングと輪堂凛 デビューイヤーの急成長に迫る

NEXレース
Screenshot

先日、最終戦を日本で迎えたNEXレースは閉幕。

ロレンツォ・M・サルヴァトーレが6年連続ドライバーズチャンピオンに、そしてアリアンロッドグランプリがコンストラクターズタイトルを獲得したが、最も印象的であったことは、武戦レーシングと輪堂凛の初優勝ということは全世界共通の認識だ。

元NEXレースドライバー高瀬川芳樹を監督に置いて設立した新興チームは、シーズン序盤にはポイント獲得の可能性さえ危ぶまれるほど悲惨な状況であった。

しかし、シーズン中盤から徐々にポイント争いまで躍進し始め、最終戦ではセーフティーカーなどの利益も得ず、チーム力とドライバーの実力でロレンツォに競り勝った結果、観ていた人に多くの感動を与えた。

今回は、その最終戦での劇的勝利を成し遂げた武戦レーシングと、ルーキードライバー輪堂凛のシーズン振り返りや、急成長の理由に迫っていく。

シーズン序盤 デビュー時の評価は散々であった

2035年シーズンが始まろうという直前、突如参戦を表明した武戦レーシング。九頭竜豪志オーナーと、元NEXレーサー高瀬川芳樹で設立された日本の新興チームは自信に満ち溢れていた。

それぞれの実績を鑑みると、日本人が期待して当然であり、当初は昨季引退をしたフォーク・オグラが起用されるとの報道もあり、新興チームの活躍は確信さえあった。

しかし、そこに選ばれたチームの主役となるドライバーは「輪堂凛」

NEXでは無論、モータースポーツ界隈でも無名のドライバーの起用に、全てのファン、関係者があっけにとられた。輪堂はNEXスクールの卒業生ではあったものの、過去の活動はバレエダンサーとしかデータがない。もちろん、実際のレース経験はなく、シムレースやゲームでの成績が優秀であったために採用されたという。

迎えたデビュー戦、予選を突破した彼女の印象的なアタックには驚いたが、決勝では無残なレースに多くの批判が集まった。

スタートでのスピンに加え、リチャードの後方での失策、ブルーフラッグ時のリボルバースト発動(結果、失格となる)など、あまりに奇行を繰り返した輪堂に多くの批判が浴びせられた。

レース後には、ルールさえ把握しきれていなかったことが話題となり、シーズン前の武戦への期待は一変。ファンの意見も的確であったのごとく、続く第2戦~ホームとなる第4戦ネオ富士でも予選落ちとなった。

富士での決勝の後日、開催されたレセプションパーティにも定刻で姿を現さずに遅刻する始末に、日本人ドライバーへの期待は、完全にイザナミの浅河カナタと小町永遠にシフトしていった。

武戦マシンの高いスペックは既に公にはなっていたにも関わらず、ドライバーの決定は失敗として取り沙汰されたのも記憶に新しい。

だが、武戦はドライバーを交代することは選択肢にさえなかったと後に述べており、輪堂の実力を疑ってはいなかったのだ。

開花を感じさせたモナコ~ブラジルでのマシン大破

Screenshot

第5戦イタリアでは、久々に予選を突破したものの、大雨によりレースは中止。そして、迎えた伝統のモナコ。

このコースほど、ドライバーの実力が試されるコースは他にない。

辛くも予選を8位で通過した輪堂は、トラブルなくレースを進めることが出来ていた。

直接的なライバルである小町永遠をオーバーテイクすると、表彰台常連のリチャードとソフィアと対等な戦いを繰り広げ、終盤でのリボルバーストは、デビュー戦とは違って見ごたえのあるものであった。

最終的には、リチャードとソフィアには及ばなかったものの、チーム初となる1ポイントを獲得し、汚名を返上したかに思われた。

しかし、続くスペインとアメリカでは予選こそ突破したものの、それぞれ12位、11位と低迷。

ブラジルGPでは、突然の雨の際に、武戦チームのピット戦略でいち早くウェットタイヤに履き替えることで2位表彰台も目前に迫る中、残り2周でスピンをしてクラッシュ。

厳しい路面状況の中、最終コーナーでリボルバーストを発動した時であった。

この愚かな行動により、武戦のマシンは大破し修復は不可能と判断。武戦は1台体制チームであったことから参戦継続は絶望と報じられ、モナコでの活躍により覆りつつあった評価も忘れ去られることとなった。

しかし、武戦レーシングは次の打つ手を準備していた。

新車両導入も上手く行かないシーズン後半戦

Screenshot

続く中国GP。武戦は、新車両を導入することを発表した。

輪堂凛の継続起用も決定しており、ドライバー交代を行わなかったことも驚きであったが、それにも理由があった。

後に明らかになったが、武戦のニューマシンは、輪堂のために開発されていたそうだ。

武戦のAI、及びエンジニアは、輪堂のペダルコントロールを特徴的に捉えており、そのドライビングスタイルを活かすためには、マニュアルトランスミッションが最適であると結論づけた。

それを採用したマシンこそ、武戦と輪堂を一体とさせる希望であった。

新車デビューとなった中国GP予選、ロレンツォ、アリス、リチャードに次ぐ、4番手タイムで自己最高グリッドを獲得した輪堂に、決勝は少しばかりの期待が集まっていた。

注目のスタート。だが、マシンは走り出すことが出来なかった。

レース直前、エンジニアがセッティングのプログラムを変更した際の工程が原因となり、今度はチーム側のミスによって希望を閉ざしてしまったのだ。

シーズンは第10戦まで進んでおり、もうチャンスはないようにも見えた。

続く11戦、結果は6位。まずまずの結果に、多少なりとも批判の対象から逃れることは出来たが、既に世間の注目はタイトルを争う、キングvsクイーンに集まっていた。

しかし、武戦は確実に手ごたえを感じていたそう。12戦でも6位に入り、迎えるは母国日本での最終戦。

大阪万博記念サーキットは初開催ともあり、チームとドライバーが短期間でどれだけセッティングを合わせられるかがレースの勝敗を決めるとも言える特異的な状況であった。

最終戦勝利の裏側 未熟だからこそ成熟していた力

Screenshot

日本の熱きファンたちに囲まれ、武戦は最終戦に挑んだ。

全チームが初となるコースでは、チームの経験値の差がなくなるため、武戦にとっては逆に好都合であった。

兼ねてから評価されていた最新のAIは、毎レースごとに輪堂のドライビングに合わせてセッティングをイチから行うことが当たり前であったため、プラクティスのかなり早い段階で、他のチームに先行してセッティングを導き出していた。

他のチームは、ドライバーのフィードバックを元にAIが分析を行うが、輪堂はAIと対話をしてセッティングとアタックを同時に行うことで、予選を完全に支配。

しかし、ここでもまさかの事態が発生する。セクター1、セクター2で圧倒していたアタックラップ、横風の強いセクター3でグリップを失ってしまい、マシンはウォールへ接触。スピン状態からなんとか復帰し、それでもファステストラップを記録する見事な走りを披露したかに思われたが、NEX委員会でラップタイム取り消しの裁定がなされたのだ。

原因は、セクター3でのドライバー非操縦走行。輪堂はクラッシュの際、気を失ってドライビングを放棄していた状態であったのだ。

幸いにも再度アタックラップの機会を与えられたが、他のマシンが走行していない状況では路面温度が上がらないため、好タイムを記録できず9番手。

ポールポジションは幻となってしまったが、イコールコンディションであれば他を圧倒できることは明白であった。

迎えた決勝、予想通り輪堂は序盤から抜け出した。

役割を全うするリチャードと共にロレンツォが後退すると、中団勢を抜け出した輪堂は、ファステストラップを繰り返しトップのアリスを抜いて、ラップリーダーとなった。

ロレンツォの猛追も神がかっていたが、これに輪堂も対抗し、気が付けば会場のファンや視聴者、それまで批判を繰り返していた者たちまでさえ、輪堂に勝ち切ってほしいと釘付けであっただろう。

落雷による赤旗中断で、一時はこのままレースが終わってしまうのではと不安に包まれたが、再開後もファンの熱量は収まらなかった。

そして、ロレンツォvs輪堂の戦いを決定づけたのは、ドライバーではなくチームであった。

ここでも武戦の未経験さが活きた瞬間であった。

落雷後にレースは再開されたが、自動タイヤ交換システムが復旧していなかったことにより、手動でのタイヤ交換を余技なくされていた。

久々の手動タイヤ交換にアドリアーノが手間取るのに対し、武戦のピットクルーは手動交換が当たり前の世界から来たばかりの”ベテラン新人”ばかりであったため、ピットインでロレンツォの前へ送り出すことが出来た。

その後の激戦を、ついに制した輪堂凛。

ドライバー、マシン、チームスタッフ、そして独自のAIが、これまでの不利な状況の中で戦ってきた経験を存分に発揮して得た、感動的な勝利であった。

輪堂を批判していた者たちは、今は、彼女の呼び名を決める議論に夢中なのだから面白い。

まさに、この勝利が証明してくれたことは、困難・未熟・不利を乗り越えるには、その状況からしかわからないことを経験値として活かすことが重要であるということだろう。

武戦、輪堂凛、そして君自身にも大きな期待を持ち、来季を迎えようではないか。

\NEXレースの世界観やレギュレーションがわかる/

\ リーフレット付き /

コメント

タイトルとURLをコピーしました